対象になる食品

対象は低酸性缶詰食品(LACF)酸性化食品(AF)です。専門用語ですが、 要するに密封容器に入れて常温で流通させる食品と考えてください。

区分該当しやすい日本の商品
低酸性缶詰食品
LACF
レトルトカレー、レトルトごはん、常温スープ、缶詰(水煮・味付け)、常温パウチ惣菜、煮物 など
酸性化食品
AF
酸を加えて保存性を持たせたもの。ピクルス、酢漬け、一部のたれ・ソース類 など
対象外になりやすいもの冷蔵・冷凍で流通するもの、乾物、もともと酸性度が高い食品(一部の果実加工品など)

日本の主力輸出品が集中する領域です

レトルトカレー、レトルトごはん、常温惣菜は、日本から米国へ出したい商品の代表格です。「日持ちするから輸出しやすい」と考えて選ばれることが多いのですが、常温で日持ちするからこそ、この規制の対象になります。

該当性の判断は pH や水分活性といった数値に基づくため、見た目や商品名では決まりません。自己判断せず、規格書をもとに確認してください。

なぜここだけ厳格なのか

理由は明確で、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)です。

密封され酸素のない容器の中で、加熱が不十分だとこの菌が増殖し、極めて重篤な食中毒を引き起こします。 米国では過去に実際の中毒事案が発生しており、それを受けてFDAは 製造者の登録と、殺菌工程そのものの届出を義務づけ、この分野専用の製造管理基準を設けました。

つまりこの制度は、「書類上の手続き」ではなく「殺菌が本当に足りているかの確認」です。 だからこそ、後述するとおり第三者の専門機関が関与します。

FCEとSID — 施設と工程で別

2つの番号が出てきますが、対応するものが違います。

番号対応するもの内容
FCE
Food Canning Establishment
施設ごと該当食品を製造する施設に付与される番号。施設の名称・所在地・処理方法・取扱食品などを届け出て取得します
SID
Scheduled Process Identifier
製品・容器サイズごとその製品にどのような殺菌工程を用いるかの届出。容器サイズが違えば別のSIDが必要になります
「容器サイズごと」という点を見落とさないでください。 同じレトルトカレーでも、180g と 200g で容器の大きさが違えば熱の伝わり方が変わります。 商品ラインアップを増やすたびに、SIDの届出が増えます。初回の見積もりでは1品目分しか見ていない、ということが起こりがちです。

通常の施設登録とは別枠です

ここが最も多い誤解です。

食品施設登録を済ませていても、これは終わっていません

通常のFDA食品施設登録と、FCEの登録・工程の届出は別の手続きです。前者を完了していても、レトルトや缶詰を扱うのであれば後者が別途必要になります。

「FDAの登録は済んでいます」というお話を伺って確認すると、食品施設登録だけでFCEが未取得というケースがあります。この状態で出荷すると、通関で問題になります。

Process Authority にしかできないこと

殺菌工程(scheduled process)が十分かどうかの判断は、Process Authority と呼ばれる専門機関が行います。

これは自社では決められず、当社のような代行業者も判断できません。 加熱温度・時間・容器・充填量・pH・水分活性といった条件をもとに、微生物学と熱伝達の専門知識に基づいて工程を確立する必要があるためです。

作業担い手
殺菌工程の妥当性確認Process Authority のみ(当社は行えません)
機関の紹介当社が承ります
FCE登録・工程届出の書類作成当社が承ります
施設登録・U.S. Agent・FSVP当社が一貫して対応します

あわせて、この分野では製造工程を管理する担当者に専門教育の修了が求められるのが一般的です。 工程を確立して終わりではなく、日々の製造でその工程が守られていることを記録する運用までが要件に含まれます。

当社が「できない」と申し上げる領域です

殺菌工程の判断は、専門機関にしか行えません。できないことをできると言わないことが、この業界で最も重要な信頼の条件だと考えています。当社は機関の紹介と、その前後の手続き(施設登録、U.S. Agent、FSVP、表示レビュー)を確実にお引き受けします。

手続きの流れ

  1. 該当性の判断 — 規格書(pH、水分活性、容器、殺菌条件)をもとに、LACF/AFに当たるかを確認します
  2. Process Authority への依頼 — 殺菌工程の妥当性確認を専門機関に依頼します。ここに時間がかかります
  3. FCEの登録 — 施設の情報をFDAに届け出て、施設番号を取得します
  4. 工程の届出(SID) — 製品・容器サイズごとに、確立された殺菌工程を届け出ます
  5. 製造記録の運用開始 — 届け出た工程が実際に守られていることを記録する体制を整えます
  6. 通常の輸出手続きFSVP表示Prior Notice は他の食品と同様に必要です
スケジュールは Process Authority の作業時間に左右されます。 機関の空き状況や、提出する規格書の完成度によって期間が変わるため、 他の手続きより早く着手してください。施設登録やDUNS番号と並行して進めるのが現実的です。

まず該当するかどうかを確認しましょう

規格書があれば、LACF/AFに該当するかの見当をつけられます。該当する場合は Process Authority をご紹介し、FCE登録・工程届出の書類作成と、施設登録・FSVP・表示レビューまで一貫してお引き受けします。

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よくある質問

常温流通を前提としない製品であれば、この枠組みの対象外となる場合があります。ただし冷蔵・冷凍にすれば物流コストと在庫リスクが上がり、扱える小売店も限られます。規制を避けるために流通形態を変えることが、事業として得かどうかは別の判断です。まず該当性を確認したうえで比較することをお勧めします。

技術水準の問題ではなく、米国の制度で定められた手続きを踏んだかどうかの問題です。日本の製造管理が優れていても、FCEの登録と工程の届出を行っていなければ要件を満たしません。実際の殺菌条件が十分であれば Process Authority の確認自体はスムーズに進むことが多いため、技術力の高さは手続きを速める方向に働きます。

FCE(施設番号)は施設に対して1つですが、SID(工程の届出)は製品・容器サイズごとに必要です。新商品を追加する場合はもちろん、既存商品の容器サイズを変える場合も対象になります。レシピや殺菌条件を変更した場合も同様です。商品開発の計画段階で、この費用と期間を織り込んでおいてください。

Process Authority の費用は当社の見積もりに含まれません。機関ごとに料金が異なり、製品の複雑さや品目数によって変動するためです。当社がお受けするのは、機関の紹介と書類作成のコーディネート、および施設登録・FSVP・表示レビューの部分です。費用まとめの記事もあわせてご覧ください。

本記事は2026年8月20日時点の情報に基づく一般的な解説であり、法的助言ではありません。LACF/AFの該当性は pH・水分活性・容器・殺菌条件などにより判断され、製品ごとに結論が異なります。本記事の内容のみで最終判断をなさらないでください。殺菌工程の妥当性確認は Process Authority が行うものであり、当社が代替することはできません。
米国食品医薬品局(FDA)は、施設登録や工程の届出をもって製品を「承認」または「認可」するものではありません。当社はFDAその他の政府機関と提携関係にあるものではありません。